ヨーロッパの難民危機におけるテクニカルサポート ~驚くべきユースケース~

Written by Hagai Ben Avi
Project Manager at TechSee

 

 当社のプラットフォームを普及するためにスカンジナビアに出張し、通信事業者様の苦労を目の当たりにして以来、私はヨーロッパ、特に戦争で荒廃したシリアからの難民の流入を注視してきました。

 

 私のチームは顧客のコールセンター管理者と協力してビジュアルサポートの実装に向けて取り組んでいましたが、その仕事のうちの一つは、エージェントがビジュアルサポートを開始すべきタイミングを特定することでした。私たちは一般的に、電話が必要以上に長引いてしまったり、エージェント側でストレスとなってしまったりするような状況を探し、ビジュアルサポートの導入を勧めています。しかしあるケースが私を驚かせました。

 

 私は、カスタマーサービスのエージェントの一人が、新規顧客の対応に苦労している場面に出くわしました。そのエージェントは、顧客が何を言っているのか理解するのに苦労しており、非常にストレスが溜まっている状態でした。

 

 彼は非常にゆっくりと話し、繰り返し現地の言葉と英語を行き来しながら説明していましたが、何もうまくいきませんでした。言語が通じない状況では何も進まず、電話というツールが役に立たない製品のように思えました。

 

 私はその担当者に自身のフラストレーションを説明するように頼みました。彼はお客様の問題を理解するのに15分ほど時間を要してしまい、かなりの時間を取られてしまうことにストレスを感じていました。顧客はアラビア語しか話せず、後に中東からの難民家族によるものだと分かりました。彼らはインターネットに接続に苦労していましたが、現地の言葉も英語も話せないため、解決に非常に時間を要していました。

 

 エージェントの説明によると、顧客の課題解決ができなかった場合には技術的な問題に対処するため、技術者を派遣する必要があるとのことでした。そのため、言語の障壁がある場合には、多くの場合技術者の派遣を必要とします。

 

 私はエージェントに口頭でのコミュニケーションだけに頼るのではなく、視覚的なサポートセッションを開始して問題を視覚化するよう顧客に依頼すべきだとアドバイスしました。

カメラ、問題、画像、SMSメッセージなどを使用することで、顧客はエージェントが何を求めているのかをすぐに理解することができます。 

 そして、エージェントは注釈と非常にシンプルな言語を使用して、顧客に対してビジュアルを用いてのサポートを開始しました。より少ない言葉とより多くの視覚的なサポートで、会話は以前よりもはるかに円滑になりました。

 

 驚くべきことに、ビデオサポートが始まると、顧客である子供が部屋に入ってきて、何が起こっているのかを見たいと伝えてきたのです。彼はパソコンの方へ近づきながら手を振ってカメラを覗き込み、私たちに微笑みかけてくれました。彼は5歳のシリア人の男の子で、彼の素敵な笑顔と父親の応答が従来のセッションを一変させました。この瞬間、彼らがどういった人物なのかが明らかになりました。それは電話越しの解読不能な声ではなく、移民の家族であり、彼らが望んでいたのは異国の地でインターネット接続を可能にすることだけだったのです。

 

 セッションは成功し、エージェントはサービス・セットアップの中で、処理が行われていないステップを特定し、視覚的なガイダンスを使用してリモートで修正することができました。

 

 この出来事を受けて、TechSee はコールセンター管理者との話し合いを始めました。驚くべきことに、移民問題は以前から話題になっていたことが分かりました。テレコミュニケーション機器のセットアップ、インストール、およびトラブルシューティングに対処する際に、言語の壁が大きな障害となっていました。顧客サービス担当者はアラビア語を話せず、一方で難民の顧客は現地語も英語も話せず、自分の言葉を表現するのに十分な知識を持っていませんでした。その結果、言葉の障壁がなければ電話で説明できたであろう問題を解決するために技術者が派遣されていました。これは明らかに時間とお金の無駄にしています。

同社はアラビア語を話すエージェントの採用も検討しましたが、トレーニングに時間がかかること、そしてカスタマーサービス部門からから貴重な時間を取ることになるため、その計画は見送られていました。

 

 ビジュアルサポートをコールセンターに導入してからは、これらのコールの90%がリモートで解決できるようになりました。TechSee は口頭でのコミュニケーションを最小限に抑えながら視覚的なコミュニケーションを可能にすることで、言語障壁の問題を解決しました。これは、言葉の壁や聴覚障害などの障害、さらにはジェネレーションギャップによって生じるコミュニケーションギャップを埋めるために、ビジュアルサポートの力がいかにうまく活用できるかを示す一例でした。

 

 上記の例のように、Techseeで働く中で一番達成感を感じる場面は、お客様に提供する価値が明確になる時です。難民の方が現地での生活に溶け込むことを考えるとき、一般的には仕事や教育、住居などに注目が集まりますが、日々の生活においてあらゆる場面で困難に直面することを肌で感じました。

 

 そうした中で、ビジュアルサポートによりお客様との会話で生じるストレスを軽減できたことは感動的であり、私が一生忘れられないケースとなりました。

 

原文:https://techsee.me/blog/technical-support-european-refugee-crisis-surprising-use-case/ By Hagai Shaham Feb 24, 2020